- 会社
- 独立
- 役割
- キャンペーンストラテジスト / マーケター
- 期間
- 2026
- 種類
- グロース · コンセプト
- 業界
- 小売 · ウィメンズウェア

01背景
ナリアンは、イランのウィメンズウェアブランドだ。都市で暮らす現代の女性に向けたスマートカジュアルの服を、繊維工場で50年以上の歴史を持つグループが手がけている。スローガンは「Smart. Stylish.」。
2026年の夏、ナリアンはテヘランのハディーシュ・モールに新店舗を出す予定で、オープンは8月11日(1405年モルダード月20日)だった。キャンペーンに充てられたのはその前の1か月、7月11日からで、全店舗とオンラインストアが対象だった。
目標は、夏を通じた客単価の向上、再来店の増加、顧客の携帯番号のリスト、そしてオープンをイベントにする助走期間だった。
02課題
客単価を上げるいつもの手段は割引だ。ナリアンのブランドブックは、ブランドを煽りや派手さから遠ざけ、落ち着いていて実用的で信頼できる存在として位置づけている。キャンペーンの戦略ノートは、そこから導かれる結論を「割引に頼らない」とはっきり書いている。夏のセールは、キャンペーンが支えるはずのポジションを損なっていただろう。
ある店舗のウィンドウには、その緊張がすでに表れていた。ブランド自身のキャンペーンパネルの横で、ラックにセールの札が掛かっていたのだ。キャンペーンは、買い物客が最後までやり遂げたくなる何かで購入額を伸ばし、特典はどれも価格から切り離す必要があった。
特典は、買い物客が完成させたくなるものでなければならなかった。
ミニマル/ラグジュアリーを保ち、割引ではなく旅とコレクションを軸に打ち出す。ナリアンの「煽らない、割引に頼らない」ポジショニングを守る。
03リサーチ
仕組みを考える前に、私はナリアンのブランドブックを、キャンペーン全体のためのひとつの参照ノートにまとめた。カラーパレットとそのルール(主役は淡いピンクで、マゼンタはブルーブラックの隣に置かない)、PeydaとGilroyの書体、ペルセポリスのレリーフから描き起こしたチューリップのマーク、そしてシンプルで温かく、誠実なトーン。以降のノートはすべて、ここを参照している。
ブランドブックにある3人のペルソナが、そのままキャンペーンの対象になった。一人ひとりに、いちばん乗りそうなクラスと、いちばん再来店につながりそうなきっかけを対応させた。
次に店舗。ある店舗を撮った11枚の写真(正面とウィンドウから、カウンター、通路、試着室まで)が、配置マップになった。大きなメッセージはガラスとライトボックスに、仕組みの案内はカウンターに、ゲートは通路をふさがない中央ステージの近くに置き、ロゴの上には何も重ねない。

ロズ、18〜25歳 · おそらくエコノミー · スタンプを集めてシェアする

ナラ、25〜35歳 · おそらくビジネス · 全種をそろえる

サラ、35〜45歳 · おそらくファーストクラス · 落ち着いたターミナルとフィナーレ

店舗のカウンター(写真)

チェックインカウンター(コンセプト画像)
04アプローチ
このキャンペーンは、買い物を旅に変える。各店舗はターミナルに、レジはチェックインカウンターに、賞品のルーレットは搭乗ゲートに、スタッフはフライトクルーになり、買い物客はいつでも旅行者だ。全体をひとつにまとめるのは、この一文だ。「Every Purchase is Your Ticket」(すべての買い物が、あなたのチケット)。
どの旅も、行き先はひとつ。「最終目的地」、つまりハディーシュ・モール店のオープンで、キャンペーンはそこで公開抽選とともに幕を閉じる。全店舗で同じコンセプトを使い、旅のテーマは9つのスタンプが担う。

店舗の正面(写真)

初版の画像。サインはモールの通路に。

最終版の画像。ガラスにデカール、ゲートは店内に。

ターミナル。店内を通るひとつの道筋。

最終目的地。公開抽選。
05仕組み
使った金額で搭乗クラスが決まり、クラスで「幸運のゲート」に入れる回数が決まる。1回の会計が500万トマン以上ならエコノミーでエントリー1回、800万トマンからはビジネスで2回、1,500万トマンからはファーストクラスで4回だ。
この段差は意図したものだ。エントリー数は到達した最も高い基準額で決まり、そのあいだの金額は切り捨てになるので、700万トマンはまだエコノミーのままだ。500万トマンの会計が2回ならエコノミーのエントリーが2回で、ビジネス1回にはならない。そしてファーストクラスでは、エントリーが2回から4回に跳ね上がる。誰かが3回に「修正」してしまわないよう、仕組みのノートはどれもこの跳ね上がりに注意書きを付けている。
それぞれの差は、スタッフのひと言にもなる。700万トマンなら、2回目のエントリーまであと100万トマン。1,200万トマンなら、4回まであと300万トマン。台本はこれを、より良い旅とより多くのチャンスとして伝え、もっとお金を使うこととしては決して伝えない。
2回から4回へのエントリーの跳ね上がりが、このキャンペーンのアップセルだ。

中央のステージ(写真)

幸運のゲート(コンセプト画像)
06検証
最初の設計では、ルーレットを回すたびに24時間有効のクーポンが出た。クーポンは9種類で、次の買い物が10〜40%オフになる。買い物客はすぐに戻ってきただろう。そして、ナリアンは割引をするブランドだと覚えてしまっただろう。
検証の段階で、この仕組みは外された。修正後は、ルーレットを回すたびにパスポートに日付入りのスタンプが押され、最終抽選の抽選権が1口もらえる。それ以外には何もない。賞品は最後に回った。当選者3人分の旅行費用で、ハディーシュ・モール店のオープン当日に公開抽選で決まり、当選者はその場にいなければならない。賞品はキャンペーン予算の外にあり、その金額はまだ決まっていなかった。
初期のコンセプト画像と最初のランディングページには、まだクーポンが残っている。正典、スタッフの台本、2つ目のページは、この削除を反映している。
最も集客力のある仕組みだったが、ブランドとぶつかるために外された。

最初のページ。スタンプごとにクーポン。

2つ目のページ。賞品はひとつ、旅。
07コレクション
ゲートが止まるのは、3つのグループに分かれた9つのスタンプのどれかだ。ディスカバリー(オーシャン、デザート、コースト)、サンシャイン(サンシャイン、パーム、サンセット)、プレミア(ラッキーデー、アップグレード、ボーディング)。プレミアのスタンプは出にくいので、全種をそろえるのは本当の挑戦になる。
レア度が意味を持つのは、コレクションの中だけだ。どのスタンプも抽選では等しく1口の価値で、確率はどこにも印刷せず、ルーレットの9つの区画は同じ大きさで描く。9つすべてをそろえるとボーナスの抽選権が加わり、提案ではそれを5口とした。
各スタンプには決まったペルシア語の名前と固有の色がある。キャンペーンがナリアンのパレットに加える色は、これだけだ。小さなスクリプトで9つすべてを描いているので、どれも同じリング、同じ書体、同じ線の太さを共有している。

オーシャン · ディスカバリー

デザート · ディスカバリー

コースト · ディスカバリー

サンシャイン · サンシャイングループ

パーム · サンシャイングループ

サンセット · サンシャイングループ

ラッキーデー · プレミア

アップグレード · プレミア

ボーディング · プレミア
08コピー正典
全店舗、オンライン、印刷物で展開するキャンペーンには、間違ったことを言ってしまう場所が何百とある。そこで、言葉の置き場所をひとつにした。ペルシア語と英語のコピーライブラリーで、確定したシグネチャーコピーと5つの代替コピー、入口と案内のサイン、チェックインでのせりふ、搭乗券とパスポートのラベル、9つのスタンプ名、用語集が収まっている。
ルールは具体的だ。買い物客は常に「旅行者」と呼び、「顧客」とは呼ばない。ペルシア語のコピーではペルシア数字を使い、「5M」とは書かない。ゲートを開くときは「ゲートが開きました」と言い、「ルーレットを回して」とは言わない。そして「ボーディング」と呼ばれる3つのもの(搭乗券、日付入りのスタンプ、プレミアのスタンプ)は決して混同しない。
スタッフの台本は、正典を話し言葉に変える。あいさつから見送りまでの7つの場面それぞれに、クルーが覚えやすい短い英語のキュー、実際に口にするペルシア語のせりふ、そのせりふを言いながら行う動作を書いた。
名前、スローガン、金額、日付は、書き換えることも、新しく作ることもしない。ここにない言葉は、まず正典を確認する。そこにもなければ仮定として印を付け、チームと決める。このノートとの矛盾は、すべてバグだ。
09印刷と空間
ビジュアルブリーフは、印刷と製作に向けて各アイテムを指定している。搭乗券は210×90mmのカードで、ミシン目で切り取れる55mmの半券が付く。パスポートはB7判の冊子(125×88mm、8〜12ページ)で、マットなクリーム色の表紙にチューリップをエンボス加工し、空のリングが9つ並ぶページには、各リングの下に日付入りスタンプのための線がある。
ゲートは直径80〜100cmのルーレットで、9つの等しい区画と、出発案内板を模した指針がある。サインには、字間を広くとったGilroyの大文字を使う。ブランドブックが実物の製作物に求めるとおり、すべてマット仕上げにし、箔はレアスタンプや賞品の証書など、いくつかのアクセントだけにとどめる。
パスポートは旅行者1人につき1冊で、キャンペーン期間を通して使う。2冊目の発行は、スタッフの台本が禁じる3つのミスのひとつだ。そしてコンセプトは全店舗でひとつなので、キットの制作は一度で済む。

受け渡し。搭乗券、パスポート、登録カード、スタンプ。

セット。パスポート、搭乗券、キューカード、カウンター用のサイン、ラベル。

旗艦店の正面

小さめの店舗

ハディーシュ・モール店のオープン
10オンライン
オンラインでの購入も対象になる。デジタルパスポート、オンラインのゲート、デジタルスタンプは同じ携帯番号にひもづくので、旅行者が店舗とオンラインで集めたものは、ひとつのパスポートにまとまる。
旅行者向けのページは、2つの世代を経ている。6月30日の最初のページは仕組みを説明していたが、まだクーポンが載っていたうえ、ビジネスの基準額は1,000万トマン、日程は3日ずれ、店舗の「目的地」が5つあった。そのひとつの「オアシス」は、ほかのどのノートにも出てこない。電話番号も集めていなかった。
2つ目のページは正典に従っている。オープンまでのカウントダウン、5つのステップで示す旅、3つのクラス、デモのゲート、9つのスタンプ、搭乗券として見せる賞品、携帯番号がそのままパスポートになる登録、5つのよくある質問、抽選の6つのルール、プライバシーに関する注記。私はこれを、キャンペーンのノートをもとに、Claudeを使って実際に動くプロトタイプとして作った。

搭乗クラス

開いたスタンプ

賞品

パスポート発行
11結果
キャンペーンは実施されなかった。予定していた2026年7月11日から8月11日までの期間は、キャンペーンのないまま過ぎた。KPI表のセルはすべて空欄で、振り返りは白紙のテンプレートのまま。報告できる成果はない。
ファイルを見ると、作業がどこで止まったかがわかる。クリエイティブや戦略の判断が必要なものは、すべて完成している。ナリアンの決定が必要なものは、すべて空欄のままだ。予算も、目標も、店舗のリストも、賞品の金額もない。
作業は、クライアントの決定が始まるところでぴたりと止まっている。
12主要な意思決定
どの決定も、理由とともにキャンペーンのノートに書かれている。
回すたびにクーポンを出していれば、買い物客は1日以内に戻ってきただろう。だが同時に、割引を待つ習慣も身につけさせていたはずだ。ブランドブックが認めていない習慣だ。ゲートが出すのはスタンプと抽選権で、賞品は旅ひとつだけだ。

エントリーを1回、2回、3回とすると、最上位のクラスはただの一段になってしまう。2回から4回に跳ね上がれば、1,500万トマン近くまで買っている人に上を目指す理由が生まれ、ファーストクラスは全種をそろえるいちばんの近道になる。
クラスは1回の会計だけを数え、端数は切り捨てる。500万トマンの会計が2回ならエコノミーのエントリーが2回で、ビジネス1回にはならない。だから、会計を分けて跳ね上がりを稼ぐことはできない。
プレミアのスタンプは出にくいので、全種をそろえることが挑戦になる。それでも各スタンプは抽選では1口のままなので、抽選は公平に保たれ、確率は印刷されず、ルーレットの9つの区画は同じ大きさになる。

最初のランディングページは、店舗ごとに別々の目的地を割り当てていた。正典は旅のテーマをすべて9つのスタンプに移したので、どの店舗もナリアンとして見え、ひとつのキットで全店舗をまかなえる。
13私の役割
以下はすべて、私のキャンペーンファイルにもとづく。ブランドブック、店舗、オープン日はナリアンのものだった。
コンセプト画像は、方向性を示し、制作業者に説明するために、私のブリーフから作ったAI画像だ。完成した店舗の写真ではなく、画像の中のものは何ひとつ製作されていない。
14成果
何も実施されなかったので、何も測定していない。以下は、このシステムのうち納品した部分だ。
15学んだこと
クーポン案が通らなかったのは、ブランドのポジションが先に書き留められていたからだ。ガードレールがすでに戦略ノートにあったので、いちばん強い仕組みを削るのに要したのは、一度の正直な確認だけだった。
正典はあらゆる矛盾をバグと呼び、提案資料のブリーフは、最もひどい2つのずれを名指しで禁じていた。それでも、そのブリーフから生成した資料は割引のルーレットを復活させ、当選者を3人ではなく5人とした。ルールが守られるのは、誰かの目に触れる前に、すべての成果物をそのルールと照らし合わせたときだけだ。
予算、目標、店舗、賞品の金額は、ナリアンが決めるものだ。計画では、どれも推測で埋めずに「未定」と記している。だから、このまま引き渡して見積もりに使える。